僕の幸せは、星をめぐるように。

わたしはお土産の袋を肘にかけ、床に手を伸ばした。


しかし、落ちたわたしの切符のまわりに、容赦なく靴たちが行き交う。


あー! 踏まれる~!


その時、

突然、ふわっと香水らしき甘い匂いに包まれるとともに、


「大丈夫!?」


と、心配そうな女性の声が降ってきた。


――え?


わたしが慌てて左右を見回しているうちに、

その女性は急いで屈み、落ちた切符を拾ってくれていた。


改札から出てくる人たちは、わたしたちのまわりを避けるように、東西通路や駅ビルへ向かっていく。


「はい、どうぞ」


その女性は、ちらっと切符の印字を見た後、

心配そうな顔をしながら、わたしに切符を差し出した。


「あ、すみません! ありがとうございます」


受け取り、ぺこりと頭を下げて上げると、その女性はわたしに柔らかい笑顔を向けていた。


――ああ、綺麗な人だなぁ。


しかもこんな人ごみの中で、助けてくれるなんて。

なんて優しいお方!


「今、切符、見えちゃったんだけど、その町に行くの?」


その女性はニッコリと笑い、わたしに話しかけた。


「あ……はい。行くってよりは、今からそこに帰るところです」


「賢治のふるさとに住んでるんだ、いいなぁ~。っていきなりごめんね!」


長いまつ毛、大きな瞳に艶やかな唇。


暗めの茶髪は、光に透けたピンク色をまとい、

革のジャケットには、柄のストールとワンピースを合わせて、

絶妙な甘辛バランスを取っている。


――宮沢賢治に詳しい、明るくて、美人な若い女性。


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