キスはワインセラーに隠れて
ペダルを漕ぎ続けると、景色は街中から閑静な住宅街へと変わって、言われた通りの住所に着いて自転車を止めると、そこには一軒のお店があった。
建物は平屋建てで、小さな庭のついた可愛らしい外観。
自転車を押しながら入り口を探していると、扉の近くで風にはためくトリコロールを見つけた。
「フレンチレストラン……?」
私がそう呟くのと同時に、再びポケットの中で振動するスマホ。
今度はメールでなく電話だ。相手はもちろん、藤原さん。
「もしもし」
『……着いたな。今出て行くからそこで待て』
「あの、ここって……?」
『そういう話はあと』
それきり、呆気なく切れてしまった電話。
どうしたらいいのか全く分からずただ立ち尽くしていると、目の前の扉が開いて、彼が姿を現した。
「早く中に来い。本日の主役」
「主役……?」
近付いてきた藤原さんが私の手を取り、建物内へ連れて行く。
その通路に置かれているランプや、花瓶などの小物にはなぜか見覚えがあって、どこで見たんだっけと考えている間に、ロッカーの並んだ狭い部屋に通された。
そこで正面から向き合った藤原さんが、大真面目な顔をしてひとこと。
「脱げ」
……えーっと。聞き間違い?
私は怪訝な表情で、藤原さんを見つめ返す。