キスはワインセラーに隠れて
「もういいか?」
「はい……どうぞ」
ガチャリと開かれた扉の向こうで、一瞬藤原さんが固まる。
あーあ……どうせ、似合ってないと思ってるんでしょ。
っていうか、あなたが着ろって言うから着たんですけど。
「……やっぱ、その格好、ここだけの話にするか」
そう呟くと、後ろ手に扉を閉めて、藤原さんがじりじりと私に近付く。
「どういう意味ですか?」
「……本田とか須賀さんがまた変な気起こすかもしれないだろ」
「え、あの二人もここに来てるんですか!? ってことは、オーナーや他の皆も?」
「ああ」
やっと質問にちゃんと答えてくれた……のは、うれしいんだけど。
今の会話の間に私は何故か後ろの壁に追い詰められていて、その壁に両手をついた彼の顔の近さに、心臓が飛び出しそうなほど大きな音で鳴る。
彼の壁ドンは今まで何度も体験してるはずなのに、いつまで経っても慣れることがない。
私たち、喧嘩してたはずなのに……
それくらいじゃ、やっぱり、一度好きになった気持ちが揺らぐなんてこと、なかったみたい。
「とりあえず……一回、食わせろ」
「だ、ダメですよ! こんな場所で……っ」
「……じゃあ唇で我慢してやる」
その台詞を聞いて、すぐにキスを覚悟して目を閉じた私。
だけどなかなか唇が触れてこないのでうっすらと目を開けてみると、藤原さんはにやりと不敵な笑みを浮かべていて。
「……それはダメって言わないんだな」