キスはワインセラーに隠れて
喧嘩をしてから、お互いそっけない態度を取っていた期間の空白を埋めるように、何度も唇を合わせていた私たち。
けれどしばらくすると、藤原さんがため息交じりに言った。
「……あーあ。そろそろ行かないと、マジでしけこんでたんじゃないかって、疑われる」
「誰にですか……?」
「みんなだよ。plaisirのスタッフ全員」
全員……そういえば、さっきもそんなようなことを言ってたな。
「あの……今日は一体、なんの催しなんですか?」
自分たちの働くお店でなく、わざわざ別のお店に集まって、私はこんな格好に着替えさせられて。
その、理由って……?
「ま、お別れ会――みたいなもんだな。あの店を辞める俺らのための」
「お別れ会……」
「須賀さん、張り切って料理作ってたからそろそろ行くか」
「……はい」
そっか……。今日はその会があるから、みんなあっちのお店にはいなかったんだ。
にしても、まだ解明されてない謎があるから、納得とまではいかない。
それに、“あの店を辞める俺ら”――って。
やっぱり、私以外の三人が辞めること、オーナーは考え直してくれなかったんだ。
「……まーた浮かない顔してるな」
そんな声に顔を上げると、大きな両開きの扉を前にして、藤原さんが私を振り返っていた。
「だって……」
「いいから顔上げろ。今からタネ明かしだ」
タネ明かし……?
ぽかんと口を開けて固まる私に構わず、藤原さんは大きな扉をひと思いに開けた。