キスはワインセラーに隠れて


「――野郎共。連行してきたぞ」


藤原さんが大き目の声でそう言うと、部屋の中から「おお~」とか「いえーい」とか、男ばっかりの野太い歓声が聞こえた。

その迫力に肩をすくめながら私も室内に足を踏み入れると、そこはplaisirそっくりのレストランになっていて、テーブルには美味しそうな食事。

それを囲むように、スタッフの皆が席についていた。

テーブルや椅子の形は違うけど……クロスの色も、照明のキャンドルも、あっちのお店と全く同じ。

もしかして、さっき通路のインテリア小物に感じた既視感も……?


「ほら、お前はこっち」


藤原さんにそう言われて我に返ると、私はみんなのテーブルがよく見える位置へと立たされて、なぜか注目の的。


「わ、私も座りたいんですけど……!」

「まあ待て。オーナーからのひと言があるから」


ぽん、と私の両肩を叩くと、藤原さんも近くの空席に腰を下ろしてしまう。

なんの羞恥プレイなの、これ……!?

自分の格好を思うと堂々と立ってなんていられなくて、スカートの裾を両手で引っ張りながらうつむいていると、ガタッと誰かが席を立つ音がして、私の隣に誰かが並んだ。

このクマさんみたいな体は……オーナーだ。

私が視界の端だけでそう判断していると、彼はなぜか改まって挨拶を始めた。


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