キスはワインセラーに隠れて
「えー。今日はみんな忙しい中お集まりいただき……」
「オーナーが休みにしてくれたから別に忙しくなかったでーす」
「うるさい。ひと晩真剣に悩み抜いた俺の挨拶の邪魔をするな」
ははは、と私以外のスタッフたちがそろって笑い声を上げた。
ホント、なんなのこれ……
どうでもいいから私も早く座らせて……
「お前らのせいで、次なんて言うか忘れただろーが。ええと、まあいいや。早速本題に入るけど――」
そこで言葉を切ったオーナー。
彼の視線を感じたような気がして顔を上げると、目が合った瞬間、オーナーはパチンと両手を合わせて私に頭を下げた。
「環ちゃん、騙してゴメン!」
「え……?」
な、なに……? 騙してゴメンって。
全く話が見えないんですけど……
黙ったまま目をぱちくりさせる私に、ゆっくり頭を上げたオーナーが言う。
「環ちゃんはもちろん。雄河も須賀も本田も……大事な仲間をそんな簡単に切るなんて、できるわけないだろ?」
「オーナー……それ、どういう意味ですか……?」
「うーんと。どう言えばわかりやすいかなぁ。
今、環ちゃんが着ているのは、plaisir二号店の女子用の制服で、きみにはそこでホールのチーフをやってもらおうかなと思ってるんだけど」
ちょ……ちょっと待って。新しい情報が多すぎて、脳が処理しきれない。
二号店……? 女子用の制服……? ホールのチーフ……?