キスはワインセラーに隠れて


席を立ち、片手でおでこを押さえているのは本田だ。

すごくショックを受けているみたいだけど……あれ? なんで本田だけ知らなかったんだろう。


「……本田、ちょっと座っとけ。お前が出てくるとややこしくなる」


そう言って苦笑したオーナーは、それから私にあの日のことを詳しく説明してくれた。

私は、まんまと騙されていたんだ。

やっと、謎が解けた――。







「――香澄さん、オーナーに色々と私の事話してくれたみたいで、ありがとうございます」


相変わらずウエイトレス姿の私は、お世話になった皆にお酌をしに回っていた。

一番に向かった先の香澄さんは、にこっと微笑んでこう言ってくれる。


「だって、“女だから雇えない――”なんて、男女差別も甚だしい。環ちゃんをはじめ、女の子ができるだけ安全に働ける環境を作ってあげられればなぁって、同性としてずっと思ってたから」


香澄さんは、オーナーが二号店をオープンさせるにあたって、女性従業員を雇うのを復活させるようにとずっと彼に頼んでいたらしい。

問題はやっぱり働く時間だから、今度のお店はランチタイムに力を入れることにして、遅番は男子だけに任せるという勤務体系を提案して、最後にはオーナーを説き伏せることに成功したらしい。


「頼りになる香澄さんと別のお店になっちゃうのは寂しいですけど、私、精一杯頑張ってみます!」

「それでこそ環ちゃん」


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