キスはワインセラーに隠れて
「ほーんだ。メシ、食わねーの?」
背後からひょこ、と顔を覗き込むと、覇気のない声と表情で本田が言う。
「環……いいよ、もう無理して男言葉使わなくて」
「まあ、そうなんだけど……本田の前では、なんかクセで」
ふふっと笑ってみせたけど、本田は少しも笑ってくれない。
あれ……? もしかして私、かなり傷つけちゃったのかな……
「ずっと嘘ついてたのは、本当に、ゴメン。ね……?」
それ以外、何も言えないや……
しょんぼりしながら本田のもとを去ろうとすると、がしっと腕をつかまれた。
振り返ると、もどかしそうな表情をした本田が口を開く。
「ちげーって。俺が凹んでんのは、俺だって今までかなりのチャンスがあったはずなのに、それ全然活かせなくて、環のこと藤原さんに持ってかれたのが悔しいだけなんだ。
……だから、お前は全然悪くねえ」
「本田……」
彼はそれから、いつもの人懐っこい笑顔を浮かべてこう言った。
「たぶん、もーちょっと女々しく引きずると思うんだけどさ。俺も二号店メンバーのうちの一人らしいから、復活したらまたよろしくな」
「うん、こちらこそ!」
よかった……やっぱり本田は本田だ。