キスはワインセラーに隠れて


こうしてすべてが明らかになると心に湧きあがるのは、何もかもわかってほっとした気持ちと、新しい職場への期待と。

それから……あんなに派手な喧嘩をしてしまったことへの、恥ずかしさ。


「藤原さん……あの時、ひっぱたいたりして、ごめんなさい」

「……ああ、それなら別に」


そう言うと、ワイングラスをを傾けてひと口飲んだ藤原さん。

そして私の方を向くと、私が叩いてしまった方の頬を撫でながら微笑した。


「飼い猫に引っかかれたと思えば、な」


……もう、また猫扱いして。

拗ねたように私もワインを飲み、料理をつつきながら、ふと思う。


「そういえば、このお店のワインセラーは、どんな感じなんですか?」


私の質問ににやりと口角を上げた彼は、椅子に背中をもたれて得意げに言う。


「もちろん、地下室だ。じゃなきゃ俺が異動するわけないだろ」

「……そうでした」


若葉さんのお店のことも、それが理由で断ったんだもんね。

オーナー、大変だったんじゃないかな?

彼の満足する地下室のあるお店探すの。


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