キスはワインセラーに隠れて


「……タマのくせに生意気」


低い声でそう言った彼が、私の小さな鼻をぎゅっと摘んだ。


「いった!」

「……飲みもんは俺が受け取るから席とって来い。ただしソファのあるとこに限る」


うわぁん……じ、自己中だ、この人。

だからフラれるんじゃないの?という言葉が喉元まで出かかったけど、なんとか我慢した私は鼻をさすりながら言う。


「く、口止め料なのになんで藤原さんの方が偉そうなんですか……」

「ああ……そうだった。なんかお前、忠犬っぽいからつい。タマじゃなくてポチのがいいか?」

「ぜぇぇったい嫌です!」


やっぱ、性格悪くてフラれるに一票……っ!

くつくつと笑う藤原さんの声を背中に受けながら、忠犬タマの私は仕方なく席を探した。

幸い店内はあまり混んでいなかったから、ほどなくソファのある席を確保することができたけど……



「あ……あのう、男同士でこれって、変、ですよね」

「お前が見つけてきたんだろ。別に隣がお前なら邪魔ってわけでもないし、俺は構わないけど?」


し、失敗した……。あろうことか私が選んでしまったのは、二人掛けソファの前にテーブルのある、絶対にカップル用の席。

同性でも、女子高生とかが友達同士で並ぶなら別に違和感はないだろうけど……


「あ……まさかお前、俺のコーヒーに薬盛って襲おうとか――」

「思ってません!」



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