新撰組異聞―鼻血ラプソディ
ハッとし、芹沢の胸にめり込んだ刀を抜いた途端、芹沢の体は、畳の上に崩れ落ちる。

土方が止めの太刀を降り下ろした。


「鴨美……、お前ら何をしたんだっ」

酸鼻極める光景を、優男の悲痛な叫びが切り裂く。

優男は息絶えた芹沢を揺さぶり、血まみれの体を抱きしめる。


「……逃げなさい、あなたは早く逃げるんだ」

叫ぶ山南を睨みつけ、優男はよろめきながら翡翠の刀を素手で掴んだ。


「何を……」

山南の声も虚しく、優男は刀先を喉に向け、深々と突き立てる。

翡翠は、何が起きたかもわからず立ち尽くした。


「行くよ」

土方と山南の姿が庭の闇に消える。

立ち尽くし、動けずにいる翡翠の腕を、原田は強引に引き、後に続いた。

勢いを増す雨の中、真夜中の惨劇は幕を閉じる。

雨は更に激しく降り始める。

すべてを掻き消すように激しく……。

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