新撰組異聞―鼻血ラプソディ
4章/新撰組!?

1話 ガキの悪戯じゃあるめぇーが

怒濤の一夜は、何事もなかったように更けた。

翌朝、無惨な姿で絶命している芹沢鴨美と若旦那風の男を発見したのは八木邸の女中だった。

芹沢の取り巻きは、4人の刺客により、1人は即死し、2人はどこへともなく姿を消した。

事件は長州藩士の仕業とされ、20日に芹沢の葬儀が神式に則り盛大に執り行われたが、翡翠は葬儀に参列しなかった。

事件の衝撃と、慣れない環境からの疲労、緊張から体調を崩し、起き上がることも儘ならなかった。


『雪霜に色よく花の さきがけて散りても後に 匂ふ梅が香』

芹沢の辞世の句が翡翠の胸を抉った。


芹沢の葬儀の数日後。
八木邸の庭に隊士を整列させた近藤は、凛と声を張り上げた。


「壬生浪士組は本日より、名を新撰組とする」

土方と原田が「会津藩御預 新撰組屯所」と墨痕鮮やかに書かれた看板を高々と掲げた。



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