新撰組異聞―鼻血ラプソディ
翡翠が臥せって数日。
先日、沖田と翡翠が見廻りの際に立ち寄った呉服屋で注文した品が、土方の元に届けられた。

男物の着物と袴の一式セットが数着と、端切れで作られた大量のお手玉。

近藤は大量のお手玉を見て、目を丸くし「気でもふれたのか」と、お腹を抱えて笑った。

「稽古に使うのよ」と説明するも、説得力に欠ける。

まして、効果的に基本を徹底させる方法とか、短期間で体重移動と相手の行動を予測し、動ける視野を広げるとか、手品のような話を近藤が信じる筈もない。


「誰の案?」

近藤は眉間に皺を寄せ、訊ねる。


「翡翠が、7日間で全員の水準を引き上げる方法だと言ったのよ」

土方は口角をあげ、してやったりの顔をする。


「翡翠が……面妖な。剣術をなめている」

近藤は大層な立腹ようで翡翠に、灸を据えてやると意気込んだ。

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