LB4

田中が立ち上がって、ニッと再び不敵な笑顔を見せ、ポンとあたしの肩に手を乗せる。

体が反射的にビクッとした。

“ポン”というよりは“ドン”くらいの強い衝撃があったけれど、痛みはなく温もりだけが伝わってきた。

そしてその手で机の横に掛けていたスクバを持ち、自分の肩に掛け、

「じゃーな」

と扉の方へ向かって行く。

そしてガラガラ開いたところで、あたしの方に顔を向けた。

そして

「マジで好きだからな」

と余計な念を押して教室を出て行った。

彼の速い足音が聞こえなくなると、一気に教室が静かになる。

「はあぁぁぁぁ……」

息を吐きながら数学のノートに突っ伏した。

目を開けるとさっき描いた円とグラフがアップで見える。

「初めて告られちゃった」

それがまさかあの田中だとは。

今朝も「乳が足りない」とか何とかディスってきたくせに。

お前はこの乳でいいのかよ。

ていうか、好きとか言われて明日からどんな顔して話せばいいの?

じっくり頑張るって何をどう頑張るんだろ。

恭子と織恵に相談すべきだろうか。

いや、やめとこう。

あの二人は田中のことを結構気に入ってるから、きっと付き合えとしか言わない。

考えることが多くてますます数学に集中できない。

頭を上げて、テキストに記載されている文字を追ってみる。

『円Oに内接する四角形ABCDの面積を求めよ』

正弦定理と余弦定理なんて開発したの誰だよ。

今すぐあたしに謝れ。

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