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ビッビッ ビッビッ
ブザーが鳴って、テレビ画面の上に文字が表示された。
『気象情報』
この情報によると、大雨で避難指示が出された区域があるようだ。
そして私たちが利用している鉄道は、結局全線運転を見合わせたという。
「あー。俺、待ってなくて正解でしたね」
「ほんとだね。うちに来てなきゃ路頭に迷ってたかもな」
「助かりました。でも……」
そこまで言ってやめたから、釣られたように隣の彼を見た。
思ったより近い距離でバチッと目が合う。
「でも、何だよ」
逸らしたら負けな気がして、キッと眉を寄せて軽く睨む。
板東も私に強い視線を向け続けている。
なんだこいつ。
やんのかこら。
「相澤さん、もっと俺を警戒した方がいいですよ」
「は? 警戒?」
「前に言ったでしょ。俺も男だって」
板東はそう言って体を詰めてきた。
急に距離感が変わって、上手に息ができなくなる。
「ちょ、ばんど……」
詰められた分、お尻を軸に上半身を後ろに傾けて顔だけ後退。
「性欲ありますって、言いましたよね、俺」
「聞いた、聞いたけど」
どんどん体が傾き、そのうち腹筋では支えきれなくなって、肘掛け部分に頭が乗った。
板東の手が、トンと私の顔の真横に着く。
板東の顔が、私の顔の真正面にある。
「相澤さん、何のためらいもなく俺をここに連れ込みましたけど、俺が欲情するとは思わなかったんですか?」