LB4
よっ……欲情?
急に何てことを言い出すの。
「思わなかった」
「バカなんですか?」
先輩に向かってバカとはなんだ、バカとは。
「だってあたしとあんたがそんなことになるなんて思わないじゃん!」
板東はいつも不自然なくらいにクリーンで、爽やかで、穏やかで。
男なんだと主張されてからは、なんとなく男らしさを感じていたけれど。
でも、内に秘めている欲をわざわざ職場の先輩である私なんかに発揮するなんて、想像すらしていなかった。
どこか私の目の届かないところで、私の知らない女に向けられるものだと思っていた。
「すげーショックなんですけど」
「何でだよ。だってあたしたち……」
一緒に仕事してても、二人きりで酒を飲んでも、一度だってそんな雰囲気になったことないじゃんか。
そう言おうと思ったのに、言えなかった。
ムキになった板東に、キスで口を塞がれてしまったからだ。
唇が触れ合うだけでなく、ぬるりと柔らかいものが入ってきて、水っぽい音が口内に響く。
その瞬間、身体の芯から全身の末端に向けて電流のような何かが一気に放出し、全身が少し膨らんだように錯覚した。
「んあっ……」
反射的に背中がのけ反った。
会社の人間なんかには聞かせたことのない、高くて甘ったるい声が漏れて熱くなる。
「そんな可愛い声、出るんですね」
「あっ、ちがっ……ん」
ずっと男勝りな姉御キャラを守ってきたのに、自分が育てた可愛い後輩にとんでもないものを聞かせてしまった。
まさかあの板東が、先輩の私を押し倒し、さらにエロさ全開でディープキスをするなんて。
「俺はずっと、相澤さんとこうすることばかり考えてたんですよ」
吐息混じりに囁かれると、ゾクゾクする。
薄く開かれた目から覗く艶かしい瞳。
こうすることばかりって、マジかよ。
隠すのが上手すぎるだろ。
拳をぎゅっと握る。
殴ろうと思えば殴れる。
でもどうしよう。
私、全然嫌じゃない。
むしろ自分の手に負えないくらい興奮してる。