LB4
逃れるふりをして体をよじってみる。
期待通りにキスの位置がずれていく。
耳まで到達すると、ほぼダイレクトに鼓膜に届く官能的な音が、覚悟していた以上に私の体を痺れさせた。
ヤバい。
こいつのキス、すごく好きかもしれない。
「相澤さんって、そんな顔するんですね」
どんな顔してるんだろう。
自分じゃ見えないけど、きっと会社の私とは全く違う表情をしているに違いない。
「見るなバカ」
両腕で顔を隠すが、すぐに彼に掴まれ開かれてしまう。
「別人みたい」
「あんたもじゃん」
唇が降下して、首のリンパを刺激する。
何度か軽く吸って、言うことを聞かないと跡を残すぞと、無言で脅しをかけている。
だけどこれは無理矢理行っているわけではないから、嫌だったら殴るなり突き飛ばすなりすればいいという力加減。
そんな駆け引きができるほど手慣れているのか。
こういう行為とは無縁な男だと思っていたのに。
板東を見くびっていた。
私が拒否しないことを悟り、更に仕掛けてくる。
「ベッド、行きますよ」
ベッド?
キスだけでは終わらせないつもりか。
「よっ」
軽々と……はいかないが、私を横抱きにして持ち上げる。
「ひゃっ!」
条件反射でしがみつく。
板東は足で私の寝室へのドアをスライドさせ、リビングから漏れる明かりを頼りに私をベッドに下ろし、逃げられないように手足をついて組み敷く。
寝転がった状態で見上げる板東は、美しく欲情していた。
「相澤さん、可愛い」
さっきよりずっと強く体を密着させて唇を合わせると、呼吸すら彼のタイミングでしかできなくなった。
主導権は完全に板東が握っている。