LB4

「とはいえ、さすがに俺も教師だ。相手が誰でもいいとか言うなら怒るぞ」

自分の身体は大切にしてほしい。

大切にしてくれる男にしか触らせてはいけない。

無論、今この世で最も君を大切にできるのは俺だと確信しているが、俺にはその資格がない。

だからせめて、心から君に惚れている男に委ねればいい。

そういう意味で言えば、田中という選択肢も悪くはないだろう。

あいつなら、無下に君を傷つけたりはしないはずだ。

「まさか。誰でもいいなんて思ってないよ。だから悩んでんじゃん」

「悩んでる? それはつまり、初めての相手が田中じゃ嫌だっつーことか?」

「……うん」

興味はあるけど、悪いことをしているようで嫌。

付き合う気はあるけど、初めては嫌。

だから、田中の気持ちに応えられない。

何も知らない処女である今は。

ということか。

「ワガママだな」

「正直に言えって言ったのせんせーじゃん」

「文句を付けないとは言ってない」

日が沈んだ。

部活を終えた1、2年生の笑い声が外から聞こえる。

放課後の教室。

無言で見つめ合う教師と生徒。

自分の鼓動と相手の微かな息づかいのみが響く異常な空気。

俺と江頭にしかわからないだろうが、事態がまずい方向に進もうとしているのは明らかだった。

しばらくの沈黙を破ったのは、江頭の方である。

「せんせー」

「やめろ」

反射的に制止の言葉が出た。

「まだ何も言ってないじゃん」

「妙なこと考えてんのはわかってんだよ」

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