LB4
拗ねた顔をしてみせる彼女。
ノートの上に転がしたシャーペンに手が当たって、軽く音が立つ。
江頭の言おうとしたことは、大方の予想がついている。
予想ではあるが、おそらく間違ってはいない。
だから俺こそ妙なことを言い出したりしないよう、軽く唇を噛んで口を開かないようにした。
「そうやってあたしが言う前に遮ったってことは、せんせー、あたしをあしらう自信がないってことじゃん」
どうして俺のことになると勘が冴えるのか。
告白されるまで田中の気持ちに気付かなかった鈍感女のくせに。
「アホか。俺で遊ぶな」
「遊んでないもん。本気だし」
「本気なら余計ダメだろ」
「だから、まだ何も言ってないじゃん」
「事前に防止してんだよ」
「だってしょうがないでしょ。どう考えてもあたしの2番はせんせーなんだもん」
……言いやがった。
いや、まだごまかせる言い回しだ。
昨年からずっとそうだった。
憧れている年上の男がいると明言しているにも関わらず、頻繁に俺と個人的な接触を図っていた。
そもそも江頭は、数学が苦手であるのは間違いないが、課題を期限内に出せないほど出来が悪いわけではない。
わざとやらないで、他に誰もいない教室に俺を呼び出す口実にしているだけである。
「女と別れたなんて、お前に言うんじゃなかったな」
「あたしが慰めてあげる」
傷心中につけ込む姑息な手。
田中がやったのと同じことを、俺にやってみせている。
「江頭、お前、自分が何言ってるかわかってないだろ」
「バカにすんなし。ちゃんとわかってるもん」
ああ、もう。
そのくそムカつく喋り方も上目使いも無駄にブラブラさせている脚も全部俺を煽るための計算だとわかっているのに。