LB4

江頭は、俺が自分を好いていることを知らずに誘っている。

思春期独特の無鉄砲さ。

そして無邪気さ。

いや、無邪気なんかじゃないな。

こいつは道徳に反していることをしっかり認識している。

そのうえで、共に禁忌を犯そうと提案しているのだ。

とんだ悪女である。

「俺はな、江頭。昔から教師になりたかったから、清く正しく生きてきたんだよ」

「知ってる。じゃあ、あたしが先生のハジメテ、もらってあげる」

「変な言い方すんな」

「じゃあ、ちゃんとした言い方するね」

「は?」

「先生、セックス教えて。あたしのハジメテ、もらってよ」

本当に言いやがった。

もうごまかしきれないぞ。

この鼓動と動揺が、江頭に届いていませんように。

「ダメだ」

と言った口が、重かった。

「嫌だとは言わないんだ」

くそ、恋愛経験ゼロのくせに、生意気な反応をしやがる。

これが若い男を手玉に取っていたという彼女の母親の血なのか。

「頼むから、煽るなよ。俺は教師でいたいんだ。俺の人生壊す気か」

「誰にも言わない。恭子にも織恵にも。もちろん、田中にも。だから」

「ダーメーだ」

「でも、嫌ではないんでしょ?」

そうだ、嫌なんかじゃないからすごく苦しい。

「彼女もいないんでしょ?」

そもそも恋人と別れたのは俺がお前に惚れたせい。

「壁になってるのは、せんせーが先生だからってことだけなんだよね?」

やめてくれ。

教師であるという自覚だけが、俺を支えているのだから。

「じゃあもう、ふたりの時にせんせーなんて呼ぶのやめるね」


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