LB4

「せんせー、起きよう。今日も学校だよ」

明るい彼女にホッとする。

もっと気恥ずかしい朝になるかもしれないと思っていた。

「身体は平気か?」

痛みを引きずったりしていないだろうか。

エアコンの効いた部屋で汗をかかせてしまったから、風邪など引いていないだろうか。

「平気だよ。せんせー優しすぎ。逆にキモい」

「キモいとか言うな」

「嘘だし。ありがと、気にしてくれて」

「あー、逆にキモいって感覚わかったわ」

「ええっ、なにそれムカつく。他の女の名前呼んだくせに」

俺たちはこの日、一緒に家を出て、別々に学校へ行った。

彼女は電車で。

俺は車で。

といっても、駅までは俺が乗せていった。

昨夜彼女を乗せたロータリーに車を停めて、俺たちは最後のキスをした。

「じゃあね、せんせー。またあとで」

次に会うときは、教師と生徒。

これまでの12時間はなかったことになる。

「おう」

彼女は昨日までとはまるで別人のような顔つきになっている。

悟りを開いたとか、一皮剥けたという表現がしっくりくる。

それは成長を感じたというよりも、悪女誕生の瞬間を垣間見たような感覚。

これから彼女はたくさんの男を騙し、手玉にとり、傷つけて生きていくのだろう。

それでもいい。

どうか、君だけは幸せであれ。



< 177 / 180 >

この作品をシェア

pagetop