LB4




扉を開けた瞬間、もわっと水蒸気のにおいがした。

地面には昨夜の暴風雨で折れた枝や吹き飛ばされた葉っぱが散らばっていて、急ぎたいのに歩きづらくて仕方がない。

板東にかき乱された私の心を投影しているようで、ちょっと恥ずかしくなった。

寝不足や疲れもあって、信号待ちで立ち止まるとボーッとしてしまう。

頭に浮かぶのは昨夜と今朝の板東との情事。

まだ身体に感覚が付きまとっている。

あたし、こいつとしたんだよな……。

何回も。

「相澤さん、信号青です」

「えっ? あ、うん」

「立ったまま眠らないでくださいよ」

あんたのせいでしょ。

と言いたくなったけど口をつぐんだ。

思い出すと照れが先行して今まで通りにできない。

板東は上手に今までと変わらぬクリーンぶりを発揮しているのに。

ていうか……何やってんだ、私は。

会社の後輩だぞこいつは。

当たり前のように食われてどうするよ。

「ああっ! どうすっかなー」

しまった、声に出た。

「何がです?」

これからのあんたとの関係だよ。

やるだけやって今後どうしていくとか何も言わないからヤキモキしてんだよ。

こっちからも言い出しにくいし、ヤリ捨てされるなんて悔しいし。

「……クライアントの無茶振り」

「昨日ある程度出来上がったじゃないですか」

あんたなんでそんな普通なの?

意識してるのは私だけ?

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