LB4

「板東さん、超ヒドイ男かも」

「え、なんで?」

「だって、もしその先輩が板東さんのこと好きだったら……」

「まさか」

俺のことを好きだなんて。

つい自嘲が漏れる。

せいぜい可愛い弟分にしか見られていなかった。

そんなに都合よく考えられない。

言葉を遮ってまで否定した俺に、千佳の口調はますます強くなる。

「そもそも、女は気のない男を部屋に入れたりしないし、体なんて触らせません」

昨夜、俺を部屋に誘ったのは彼女の方だ。

遠慮する俺を、何の戸惑いもなく連れ帰った。

でも、それは台風で電車が止まったから。

ただの親切であって、気があるとかないとかではない。

「もちろん、そういう遊びが好きな女性だったら話は別ですけどぉ?」

「いや、それは絶対にない」

と信じたいだけなのかもしれないが。

千佳は軽くため息をついて、呆れたように説教を続ける。

「だったらその先輩、板東さんにヤリ逃げされたみたいで可哀想」

は?

やりにげ?

「そんなつもりは微塵もないよ!」

「板東さんの“つもり”なんてどうでもいいんです。その先輩の“気持ち”の話をしてるんです」

「気持ち?」

「だって板東さん、勝手に想像してるだけで大事なこと何も確認してないんだもん」

ハッとした。

俺の“つもり”より、相澤さんの“気持ち”。

千佳の言う通り、俺は大事なことを何も確認していない。

知るのが怖くて逃げている。

確かに、これじゃあヤリ逃げだ。

「ていうかなんで私がこんなことアドバイスしなきゃいけないんですか!」

「そうだよね、ごめん」

相澤さん、今どこで何やってるのかな。

結局使わなかった布団の片付けでもしているだろうか。

「今日、千佳ちゃんと話せて良かったよ」

目が覚めた感じがする。

「じゃあ、今日は私の部屋に来てくれてもいいんですよ?」

「それは遠慮しとく……」




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