LB4
翌朝。
電車の中で相澤さんと会えるのを期待していつもの車両に乗ったけれど、彼女は乗ってこなかった。
もし相澤さんが俺にヤリ逃げされたと思っているのであれば、その誤解は絶対に解いておきたい。
真剣に好きなのだと伝えた上で、ちゃんと彼女の気持ちを聞かなければ。
彼氏がいるからって逃げている場合ではない。
本当にヤリ逃げしてしまってはいけない。
勇気を出せ。
出社すると、彼女は先に会社に到着していた。
俺はカバンを置くなり、すぐに彼女のデスクへと向かう。
「あの、相澤さん」
背後から声をかけると、思いっきり不機嫌そうな顔がこちらを向いた。
その顔がめちゃくちゃ怖くて、たじろいだ。
「おー板東。おはよう」
よく見ると、彼女の顔は不機嫌というよりは不健康だった。
いつもより肌の血色が悪いし、目は少し充血してるし、クマもある。
「おはようございます。あの、どうしたんですかその顔……」
「はぁ? てめー自分の顔が良いからって人の顔をけなしてんじゃねーよ」
うわっ、不機嫌マックス。
怖さ5割増し。
「けなしてませんよ。相澤さんはいつも美しいです」
そう言うと少しだけ顔が緩む。
隠しきれない素直さがたまらなく可愛い。
「朝からよくそこまで口が回るな」
「本心ですから。それより、顔色悪いですけど、具合でも悪いんですか?」
「具合なんて悪くない。ただの寝不足」
「寝不足? なっ、何やってたんですか?」
つい声に力が入る。
まさか昨夜、彼氏と ……?
なんて考えが浮かんで嫉妬が湧いてしまった。
俺との行為に上書き保存されたような気がして、想像なのに胸がズンと痛んだ。
彼女は上目使いで思い切り俺を睨み付ける。
「うるさいな。母親かお前は。眠いからコーヒー買ってくる。どけ」
彼女が財布を持って足早に歩き出したから、俺は慌てて追いかける。
「ちょっと待ってくださいよ」
「ついてくんな」