LB4
ヒールをコツコツ鳴らしてどんどん前へ進んでいく。
短くなった髪がふわふわ揺れる。
近づくほどにいい匂いがする。
「待ってください。お話ししたいことがあります」
「後にしろ」
「相澤さん!」
聞く耳を持たない彼女の腕を掴み、引き止めた。
「何すんだよ。放せ」
「放したらまた逃げるでしょう?」
「逃げてねーし」
「じゃあ、寝不足の理由、教えてください」
「はぁ? やだよ」
「言えないようなこと、してたってことですか?」
「アホかお前は。考え事してただけだ。放せ」
掴んだ腕は彼女に振り切られたが、すぐに反対の手を強く握る。
逃げられないことを悟った彼女は、再び俺を睨み付けた。
「考え事って、何ですか?」
「お前には関係ない」
「本当に?」
「自意識過剰だぞ!」
眉間にシワが寄ると、目の下のクマが目立つ。
掴んでいるのとは反対の手で軽く頬に手を添えると、ファンデーションの乗った不自然な感触がした。
体を強張らせる彼女。
目の充血がさっきより悪化した気がする。
「本当に俺に関係ないなら、どうして俺に対してこんなに不機嫌なんですか」
踏み込むと図星を突かれたように表情を歪め、目を逸らす。
触れている彼女の頬が、みるみる熱くなっていった。