LB4
彼女の下品な怒鳴り声が大音量で廊下に響く。
幸い見える範囲には誰もいなかった。
声がどこまで届いたかはわからないが、聞こえた人は驚いただろう。
ていうか、またキンタマかよ。
生で見て、その手や体で触れて、それ以上のことまでしたくせに、ついてんのかよって何だよ。
「やっぱりお前なんか男だなんて認めない」
「どうして?」
「女に気持ちを確認してからでないと、口説くことさえできないヘタレだからだ」
彼女の主張はあまりに正しい。
なにも言い返せない。
「相手の男と張り合う度胸もないくせに、人の女に手ぇ出してんじゃねーよこのカス!」
酷い言われ様。
しかし、これもまた正しいのだ。
長年彼女の恋人を務めているその男は、きっと男気に溢れていて、彼女以上に気が強く、腕っぷしもなかなかの人物だと想像している。
寝取った側の男としては、正直、報復が怖い。
絶対に会いたくないし、張り合ったところで勝てる気がしない。
「迷惑をかけたくないからこれ以上言い寄らない」というのは、自分に都合の良い言い訳だった。
「これ以上言い寄ったらあなたの彼と対峙しなければならなくなりそうなので遠慮しますが、あなたの方から来てもらう分には大歓迎です」というのが本音である。
戦う勇気もないくせに、気持ちいいことだけ都合良く頂いて逃げようとしている。