LB4
なんだよそれ。
先月別れたなら、昨日の「別れたらどうする?」は何だったんだよ。
再び顔を伏せた彼女の両頬を掴み、強制的にこちらを向かせる。
「どうしてそれを言わなかったんですか!」
「だって……」
再び顔を伏せようと力が入るが、俺の手がそうはさせない。
俺の視線から逃げられないとようやく理解した彼女は、視線だけ伏せて唇を尖らせた。
なんて可愛いんだろう。
ここは会社だけど、キスしたい。
この角度で眺めると、アイライナーとマスカラで彩られた目元がとても綺麗だ。
ずっと憧れていたこの人が、手に入るかもしれない。
そう思ったら手足が震える。
俺まで泣きそうだ。
「だって、何ですか?」
「それでも好かれてるって、確信を得たかった」
「確信、ですか」
「言葉だけじゃ信じられない。別れた彼だって、あたしに好きだと言いながら若い子に心変わりしてたみたいだし」
別れの原因はそれか。
別れたこと自体は嬉しいけれど、彼女を傷つけたことには怒りを感じる。
「今でもその彼が好きですか?」
「どうなんだろう。付き合いが長かったし、嫌いになったわけじゃないからよくわからない」
「じゃあ質問を変えます」
「え?」
「俺のこと、好きですか?」
俺が距離を詰めると、後退した彼女の背が階段の手前の壁に触れた。
そこは鉄製の防火扉になっていて、ゴワン、と大袈裟な音がした。
それでも俺は距離を詰め続けて、顔と顔の距離が5センチ弱になったところで停止。
ああそうか。
言葉だけじゃ信じられない彼女に、言葉を求めるなんて野暮だった。
絶妙な角度に顔を傾け、テレパシーを送る。
『キス、したいですか?』