LB4
「覗いてんじゃねーよエロオヤジ」
「上司に向かって酷い言い草だな」
本当にその通りだと内心ヒヤヒヤする。
しかし彼女は全く臆することなく続ける。
「4年前にあたしが倉庫で見たのよりはマシな光景だったんじゃないですか?」
4年前? 倉庫?
マシってことは、課長は濃厚なキス以上のことをしていたということ?
「それを蒸し返さないでくれるかな。若気の至りじゃんか」
苦笑する課長。
「何が若気だ。あんた、当時すでに30越えてたっつーの。松本さんが出世できたのは、あたしがそれをバラさなかったお陰なのを忘れないでくださいね」
彼女が偉そうに言い放つと、課長は怒るどころか降参と言ったふうに手を上げる。
彼女はそれに満足したように、颯爽と階段を降りていった。
そして下りきったところでこちらを振り向き、彼女を呆然と眺めていた俺に向かって告げる。
「板東、行くぞ」
「は、はい!」
本当に、この人が俺の彼女になったのか。
当たり前にデートしたりキスしたり、していいってことだよな。
もっとうまく行けば、嫁にもらえるかもしれない。
諦めていた夢が現実味を帯びて、明るく広がっていく感覚がする。
一歩踏み出そうとしたところで、課長が横から耳打ちしてきた。
「そこの資料室なら、鍵さえ閉めとけば誰も来ないぜ。ちなみにティッシュとゴムは窓際の棚の、青い箱の中」
「えっ……」
そしてポンと肩を叩き、事務所のフロアへと上っていった。
いやいや、しない。
会社なんかでは絶対にしないけれども。