LB4
約束を取り付けることに成功した私は、今夜の妄想をめいっぱい繰り広げながら仕事に打ち込んだ。
「千佳ちゃん、他社の方と話すときは語尾を伸ばさないで。なになにで〜すなんて、バカっぽく聞こえるし、ナメられる」
「はぁ〜い。気をつけまぁ〜す」
「だからそれをやめてって言ってるの」
早川先輩の小言だって、今日はあんまり気にならない。
今夜城山さんに、あなたのことボロカス言ってやるんだから。
そう思ったら小言を聞くのも楽しくて仕方がない。
全部全部、ネタにしてやる。
そして城山さんは可愛くて可哀想な私を守りたくなって、好きになって、私と幸せになる。
シナリオは完璧だ。
会社にいてこんなに心が躍ったのは初めてかもしれない。
夜8時前。
ちょっと遅めに仕事を終えて、ドキドキしながらメイク直しに力を注いだ。
「千佳ちゃん、行こうか」
「はい」
人目を盗んで二人で会社を出て、城山さんが連れて行ってくれたのは、落ち着いて話ができそうな喫茶店だった。
お酒の飲める場で笑いながら……を想定していたのに、私の予定は完全に狂った。
ここじゃ終電前に閉店するし、酔った勢いで既成事実を作る作戦も実行不可能。
城山さんは邪気のない笑顔で告げる。
「仕事の話だから、酒を入れちゃダメだと思ってね」
「お……お気遣いありがとうございます」
まあいいや。
二人きりには変わりない。