LB4
俺は中学からずっと、内部進学で大学まで上がってきた。
中学入試以来、受験なんてしなかったから、ぬるま湯に浸かってきた自分の学力なんて大したことないと思っていた。
けれど、知らないうちにしっかり勉強させられていたのだと、その時初めて発覚。
いやいや、自分に感心している場合ではない。
俺の使命はこの子の成績を上げることなのだ。
「ごめんね、娘が苦労かけて」
時々まゆみさんがベッドでたっぷりご褒美をくれるから、めげずに頑張った。
「教え甲斐はあるよ。大変ではあるけどね」
「あの子、この間初めて理科が楽しいって言ってたの。大悟くんのこと、大好きなのね」
「それは嬉しいね。モテ期かな」
大悟くーんと嬉しそうにわからない問題の解説をせがむえみちゃんの顔が浮かんで、この状況が少し申し訳なくなったりもする。
当然、まゆみさんとの関係は秘密である。
「モテといえば、例の夢見る女の子とはどうなの?」
夢見る女の子とは、千佳のことである。
まゆみさんには「年上のお姉さんに恋愛相談」的な感じで、何度か話をしていた。
手の届く位置にいるが、なかなかモノにはできないと。
「相変わらず、イケメン先輩を追いかけてるよ。一昨日もベッドで愚痴られた」
拗ねて見せると、まゆみさんは笑って抱き締めてくれる。
若いだけの女にはない、低反発な抱き心地が好き。
「優しすぎると、損ね」
「優しいかな、俺。生徒の母親に手を出す極悪人だよ?」
「悪人が優しくないなんて誰が決めたの?」
「確かに、誰が決めたんだろう」
そうか、俺は優しい極悪人か。
酔った千佳を介抱したり恋の相談に乗ったり、めいっぱい優しくしながら、目的はいつでも自分の手中に収めておくこと。
悪いヤツはいつだって、優しさをエサにして獲物に近づくのだ。
「まゆみさんも優しい悪人?」
「そう。娘の家庭教師に手を出す極悪人よ」