これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「あ、っん」

柔らかい感覚が、唇に触れた。その感覚が何なのか私の唇は知っている。彼が教えてくれた甘い感覚だ。

「ありがとう、恵」

たった一言だった。けれどどんな言葉よりも彼の気持ちをあらわしているような気がして温かい気持ちが胸に広がった。

「本当はもっと色々したかったんです。でも私が出来ることって本当に少なくて」

「どうして? 俺本当に嬉しい。それに恵は“出来ないこと”より“出来ること”の方が大事だってこと早く気が付くべきだ」

 私が出来ること? それって一体何だろう。具体的なことが思い浮ばない。

 背中からギュッと両手で抱きしめられた。

 そこから彼の温度が伝わってきて、その温かさに身を任せたくなる。

 まわされた腕に頬をそっと摺り寄せた。

「俺を喜ばせたいなら、他にも方法がある」

 最近になって勇矢さんの言葉からその気持ちがわかるようになっていた。今も彼のいいたいことがわかる。

 恋愛経験皆無の私でも、この歳になればそのくらいのことは知っている。だた経験がともなっていないだけだ。

 だから今、実際目の前にその状況が迫っていても、どうやったらいいのかわからない。そういうことは、私の知識の範囲外だ。

 この状況を考えていなかったわけじゃない。その証拠に洋服の中身だって今日はばっちりだ。
意識してしまい、そのため顔に熱がこもる。
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