これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
第五章 side 勇矢

①彼女の事情

 公園を出てしばらく歩いたところにあるコンクリートの壁に体を預け、大きく息を吐いた。

 彼女を傷つけた……。

 青い顔で、唇をずっと震わせていた。そこから発せられる声も同様に震えていて、瞳には涙がたまっていた。

 思わず手を伸ばしそうになる。それをぐっと我慢して、彼女への思いを断ち切るように俺は冷たい言葉を浴びせ続けた。

 断ち切るなんて……そんなこと、できるはずもないのに。

「最低だな……」

 でもこれでよかったんだ。こうするのが一番……彼女のためになるんだから。

 壁にもたれたまま俺は空を見上げた。星も月さえもない夜空をひとりでみつめる。

 あの花火の時に見上げた夜空と同じはずなのに、ただ深く暗いだけの空は俺の気持ちを表しているようだった。

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