これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「お礼を言うのは、早いのでは? 恵がどう答えを出すか私にはわかりませんよ」

 兄の言葉を受けて、勇矢さんが後ろにいた私を振り返る。

「はい。わかっています。これから彼女に許してもらえるように一生謝罪し続ける覚悟です」

 真剣な眼差しはまっすぐに私に向かっていた。

「あっそ。あとは若いおふたりでどうぞ」

 兄はそう言い残すと、ズボンのポケットに手を入れたまま歩き始めた。私たちふたりを残して……。

 兄の姿が見えなくなった後、勇矢さんはクルリと私のほうへ振り返った。

 あの時からずっと、胸の中に住み続けていた人が現実に目の前にいる。それだけでも目頭が熱くなった。

「遅くなってすまない」

 私の目が潤んでいるのに気付き心配そうに一歩、私に近づいた。

「あの、私……色々……えーっと」

 何から話せばいいのか、何を話せばいいのか混乱して言葉が出てこない。

 そんな私の気持ちを察してくれた勇矢さんが、口を開く。

「ゆっくりでいい、ちゃんと話をしよう」

 私の手をギュッと握ってくれる。それまで寒さでかじかんでいた手があっという間に温かくなった。血が通ったような感覚がする。

 それまで話そうと思っていたことが、全部頭から消えてなくなってしまった。

「やっぱり……勇矢さんじゃないとダメみたいです」

 自分の気持ちを伝えるために、泣かないようにぐっと涙を我慢する。

「私の手を握ってくれるのは、勇矢さんじゃないと……」

 私が言い終わる前に、グイッと手を引かれた。そしてそのまま勇矢さんの胸に強く抱きしめられる。

「私、もう一度ここに戻ってもいいですか?」

 仰ぎ見るようにして、彼の顔を見つめた。
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