これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 言われた通り、走らずに転ばずに屋台まで高浜さんと歩く。

「注文は任せてもらえますか?」と言い、ラーメンと餃子を注文してくれた。そして少し先に置いてあるテーブルへとふたりで座る。

 ちょうどお客さんの谷間だったのかほとんど人がいなくて、私はテーブルからラーメンを作っているおじさんを観察していた。

 向いに座る、高浜さんも同じようにしている。特にふたり何かを話しているわけではないけれど、でもふたりで過ごしているこの時間がすごく心地いいものに思えた。

 しばらくすると、注文していた餃子と、ラーメンがテーブルに置かれた。

「ここの餃子、一口サイズで食べやすいんですよ。明日はお休みですから、多少の匂いも許されるでしょう?」

 運ばれてきた餃子とラーメンを前に、高浜さんの「さぁ食べましょう」のを合図にふたりで食べ始めた。

「いただきます」と手を合わせてラーメンを食べる。ちょっとズルズルと音がでてしまったけれどそれは愛嬌ということで……。

「おいしい!」

 ラーメンというよりも、昔ながらの中華そばといった表現の方が近い気がする。鶏ガラベースの醤油味のラーメンは、いくらでも食べられそうだった。

「気に入っていただけたようで、よかった」

 そういった高浜さんの眼鏡が、ラーメンの湯気で曇っている。目元が全く見えない。

「眼鏡外さないんですか?」

「あぁ、これをはずしてしまうと本当の自分になってしまいますからね」

 本当の……自分?

 彼の口角がきゅっと上がっていることから、それが冗談だということはわかる。けれど私はその言葉に引っかかってしまった。
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