姫恋華〜ひめれんげ〜【改稿版】
俺、風間新之助が彼女に出会ったのは、男たちが剣の稽古をする道場だった。
突然現れた彼女に、俺は一瞬我が目を疑った。何故なら彼女は袷に袴という出で立ちで、どうやら道場に稽古に通って来ているようだった。
師範代もよく打ち解けているから、恐らく俺が道場に雇われる前からここに通っているのだろう。
彼女の出で立ちを不思議に思う者はいないようで、ごく自然に子供たちの稽古に加わった。
藤吉というガキ大将が彼女の相手のようだ。勝ったり負けたりの好敵手。右に左へと跳ね回る藤吉に、彼女は奇声を上げながら竹刀を振るう。
それはとてもではないが年頃の婦女の振る舞いとは思えなかった。呆気にとられる俺の目の前で、彼女は見事藤吉を打ち据えた。
けれど彼女の立居振舞の上品さであるとかその物言いなどを聞いていると、彼女が卑賤の生まれでないことは確かで、俺は「ゆら」と名乗った少女に少なからず興味を覚えていた。
俺はそれほど異性に縁があった方ではない。国許を離れ、この江戸に来てからはなおさらで、会話をしたと言えば長屋のおかみさん連中くらい。
だからか、天真爛漫な彼女の笑顔が俺には眩しかった。境遇の違いがまざまざと感じられ、俺は何故か数か月前の光景を思い出していた。
突然現れた彼女に、俺は一瞬我が目を疑った。何故なら彼女は袷に袴という出で立ちで、どうやら道場に稽古に通って来ているようだった。
師範代もよく打ち解けているから、恐らく俺が道場に雇われる前からここに通っているのだろう。
彼女の出で立ちを不思議に思う者はいないようで、ごく自然に子供たちの稽古に加わった。
藤吉というガキ大将が彼女の相手のようだ。勝ったり負けたりの好敵手。右に左へと跳ね回る藤吉に、彼女は奇声を上げながら竹刀を振るう。
それはとてもではないが年頃の婦女の振る舞いとは思えなかった。呆気にとられる俺の目の前で、彼女は見事藤吉を打ち据えた。
けれど彼女の立居振舞の上品さであるとかその物言いなどを聞いていると、彼女が卑賤の生まれでないことは確かで、俺は「ゆら」と名乗った少女に少なからず興味を覚えていた。
俺はそれほど異性に縁があった方ではない。国許を離れ、この江戸に来てからはなおさらで、会話をしたと言えば長屋のおかみさん連中くらい。
だからか、天真爛漫な彼女の笑顔が俺には眩しかった。境遇の違いがまざまざと感じられ、俺は何故か数か月前の光景を思い出していた。