王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「いいかい、宇野ちゃん。イメージするんだよ」
瑛莉菜の耳元で、呪文を唱えるように妖しく囁く。
「異世界のものを食べるとその世界の人間になるっていうのは、大昔からある話だろ? 宇野ちゃんには公爵の侍女とかぴったりだと思うな」
「はあ? まさかこれを食べれば小説の中に入れるだなんて本気で……」
「いいから、いいから! 俺まだこれ食べてないし、参考のためにも味見してみてよ」
瑛莉菜は反抗の意思を込めて弥生を見上げたが、彼は期待に満ちた表情で瑛莉菜の行動をジッと待つばかりだった。
仕方がない。
瑛莉菜はやよいはるの担当編集者であり、そしてなにより彼の小説のファンである。
結局この人から新しい物語を聞かせてもらうためなら、彼女は何でもしてしまうのだ。
これを食べたところで、困ることといえばせいぜいお腹を壊すくらいだろう。
まさか、本当に小説の中に入り込むなんてこと、あるわけない。
瑛莉菜は諦めたように緩く首を振って、目の前に置かれた青い壺に手を伸ばした。
「……気が済んだら、ちゃんとプロット練り直してくださいね」
「もちろん!」