王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~



* * *



稀斗は出不精の兄の部屋に寄る前にスーパーで食品を買い、それから大型書店に立ち寄った。

彼は世話のかかる兄が嫌いではなかったし、自分とは全く違った人生を好き勝手に楽しんでいる兄を応援してやろうとも思っている。


もちろん兄が書いた小説はいつも発売日に買っているが、『結婚しナイト!』のアニメ化を記念して、限定デザインの帯が出回っているらしい。


一度弥生の部屋でサンプルを見たことがあるものの、やはり本屋で見つけてレジへ持っていく作業がいいのである。

奮発して3冊も買ったものだから、店員に妙な目で見られたが。



稀斗はまだ兄ほど渋さを漂わせる男ではなかったが、一見冷たい印象を与えるほどすっきりとした顔立ちと甘やかな雰囲気は、なんとも言えない魅力を作り出していた。


切れ長の瞳もまっすぐな鼻すじも、薄く形のいい唇も、女性の目を引いて止まない。

今や法人営業部のホープで、その精悍な顔つきと屈託のない笑顔とのギャップは誰の目にも魅力的に映るというのに、浮いた噂のひとつもない。


それがまた彼の人気に火を付け、彼の唯一の恋人になった暁には、自分だけを一途に愛してもらえるのではないかと淡い期待を抱かせる。
< 13 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop