王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
すらりとした長身に整った顔立ちで、いかにも魅力的なオーラを纏わり付かせたスーツ姿の男が、女性向け恋愛小説レーベルの同じ本を3冊も買う。
これが店員の目に滑稽に映らないわけはなかった。
(……次から店変えっかな)
稀斗は右手でネクタイを軽く緩めながら、スーパーの袋を持った手で兄の部屋のインターフォンを押した。
しかし部屋の奥からドタバタと音が聞こえるだけで、一向に開く気配はない。
物音がするなら、部屋の中にはいるはずだ。
というか、弥生が部屋の中にいないことのほうが珍しい。
そう思ってドアノブに手をかければドアは予想通り簡単に開いたが、その先で目に飛び込んできたものに、稀斗は小さく心臓が跳ねるのを感じた。
訪問者のほとんどない弥生の部屋の玄関に、女性もののパンプスがキレイに揃えて置いてある。
それが兄の担当編集者である宇野瑛莉菜という女性のものだということは、すぐにピンときた。
彼女とはまだ一度も顔を合わせたことはなかったが、稀斗は瑛莉菜の写真を見たことがある。
それに、この部屋に訪れたとき弥生の話に登場する人物は専ら瑛莉菜のみだ。
印象に残らないわけがない。