王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
弥生の無茶ぶりに腹を立てながらもいつも素直に受け入れる瑛莉菜の話は、彼を退屈させなかったし、その可愛らしい反応を実際に見てみたいとも思った。
彼女が苦い初恋の経験から、未だに恋愛に臆病だということも知っている。
もっと自分を大事にしてくれる男を選べばいいのに、とも思う。
(おいおい、まさかドタバタって……)
稀斗が部屋のドアを開けたことはわかっただろうに、人が出てくる気配どころか、ふたりの話し声すらしない。
稀斗はなんとなくモヤモヤとした焦りを感じながら、ぞんざいに靴を脱いでリビングへと続く廊下に足を付いた。
いくら弥生でも、そこまで節操ナシなら絶対殴る。
瑛莉菜に必要なのは、彼女を本気で大事にしてくれる相手なんだと、自分で言っていたではないか。
稀斗は瑛莉菜との初めての対面に胸が小さく高鳴ったことも忘れて、リビングのドアを音を立てて押し開けた。
「きいとーーーっ!」
「おわっ!」
もし弥生と瑛莉菜が、稀斗が話に聞いていたように単なる作家と編集者以上の関係なら、少なからず自分はショックを受けるかもしれない。
そう思ってなんとなく身構えてドアを開けた稀斗だったが、その途端、突然弥生が抱きついてきた。