王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

「やめろよ、気持ちわりーな!」


稀斗はウエストにしがみ付いてくる兄の腕を引き剥がしながら、部屋の中に視線を走らせ、写真でしか見たことがない瑛莉菜の姿を探した。

しかし瑛莉菜のコートや鞄が目に入るだけで、肝心の彼女の姿は見当たらない。


「宇野ちゃんが……」


小首を傾げつつ震える弥生の声に反応して見下ろして、彼が涙目で自分を見上げていたことにギョッとした。

この兄はいつもおかしいが、今日は特別様子がおかしい。


「宇野ちゃんが、消えちゃった……!」

「はあ? なに、どういうこと? ちゃんと探したの?」

「どこにもいないんだ、トイレもお風呂も、ベッドの中も見たけど」


……なんか探す場所おかしくねーか?

弥生のこの動揺の仕方といい、稀斗はますますふたりの仲を勘繰りたくなったが、兄が本気でパニックに陥っているようなのでやめておく。


この様子からして弥生がかなり必死に探したということは伺えるし、彼女がイタズラで隠れているわけでもなさそうだ。

なにより、部屋の中には彼女のいた痕跡はあるのに、全く気配がない。


「わかった。俺ちょっと外見てくるから、兄貴はもう一回部屋ん中探して。コンビニとか行っただけかもしれないし」
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