王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
稀斗は180cmを超える長身であったが、兄の弥生はそれよりさらに背が高い。
いつものようにふにゃふにゃしてさえいなければ、目線は稀斗より上にあり、スーツを着たらさぞシャキッとするだろうに。
「目の前で消えた? 兄貴は宇野さんがどこに行ったか知ってんの?」
「わからん! でもたぶんもうこの世界にはいないと思う」
「はああ?」
稀斗には、弥生が何を言いたいのかほとんど理解できない。
からかわれているのかと思うほどだ。
だけど兄の表情は真剣そのものだし、コートも鞄も靴も置きっ放しなのに瑛莉菜の姿だけが見えないというのは、やはりどこか様子がおかしかった。
今すぐにでも部屋を飛び出して、瑛莉菜を探したほうがいいに決まってる。
そう思って動き出そうとする身体をなんとか抑えようと、大きく息をついた。
「……あのさ、とりあえずちゃんと説明してくれる? 宇野さんが、その、消えたときのこと」
自分自身を落ち着けるように低く抑えた声でそう言うと、弥生は神妙に頷き、ついさっきまで瑛莉菜が座っていた椅子へ弟を案内した。
そして青い歪な形の壺を前に、確かにその椅子に座っていたはずの瑛莉菜が、突然姿を消したときのことを話し始めた。