王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
* * *
「……じゃあ、この壺ん中の変な実を食って、宇野さんは小説の中に入り込んだ。兄貴は本気でそう思ってんだな?」
「たぶん。そうとしか考えられない」
稀斗は弥生から話を聞き、ひとことそう確認すると、しばらく黙り込んでしまった。
しかし目の前で見ていた弥生にも、瑛莉菜の身に起こったことが何なのか説明できないのだ。
本当に、小説の中に入ってしまったということ以外には。
新作はまだプロット段階で、結末も決まっていなければ設定すら危うい。
瑛莉菜が本当に小説の中に入り込んだということを確認する術もない。
弥生は常日頃からあまり後悔しない性格だったが、お気に入りの瑛莉菜が消えてしまったとなっては、今度ばかりは堪えていた。
「……わかった」
黙って考え込んでいた稀斗は何かを決意したように小さく呟くと、テーブルの上に置いてあった青い壺を引き寄せた。
「この変な実を食って本当に小説の中に入り込むのか。それを確認する手立てはひとつだけだ」