王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
迷いなく見上げてくる彼女の瞳は、まるで晴れ渡った夏の午後のようで、キットは思わず諦めと感嘆の混ざった微笑みを浮かべた。
自分はきっと、この先彼女から目が離せなくなる。
他の男にはもう二度と触れさせたくないと思うだろうし、男たちの中でただひとり、彼女に自由に触れる権利が欲しいと思うだろう。
しかし力尽くで彼女にそうさせるのはたとえ自分自身だろうと許せないので、エリナが自らそう望むほど、心を預けてくれるのを待つしかない。
それでもいいと思えた。
ふたりには、元の世界に戻っても、まだまだ時間はたっぷりあるのだから。
「そんなことで泣けるお前には、ちゃんと誰かからいちばんに大事にされる資格があるよ」
エリナの柔らかな髪を指先に絡めたまま彼女の頬をなでると、目を閉じて手のひらに頬を摺り寄せてくる。
エリナはうっとり夢見心地で、キットの力強くて優しい腕に捕らわれているときが、とても好きな時間だと思った。
左腕がしっかりと腰に回され、右手は時折思い出したように頭をなでたり、耳をくすぐったり、髪を絡めて遊んだりしている。
そうされていると、次第に胸の奥から小さな欲求が突き上げてきて、こっそり自分を抱きしめる男を見上げると、月明かりに照らされた彼は深く静かな青い瞳を、優しくエリナにそそいでいた。