王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~



* * *



一年でいちばん大きな王宮での舞踏会に比べればホールも小さいし人も少ないのだが、13年に一度きりの収穫祭ともあって、伯爵主催のパーティーとしては異例なほど国中から人が集まっている。


今夜のウェンディは、品のいいパステル調のひまわり色のドレスを着ていた。

流行りに則って襟ぐりは大きく開いているが、白いレースやフリルが贅沢に使われ、ふんわりとしたシルエットのドレスは、彼女を人形にドレスを着せて歩かせているかのように見せる。

抜けるような白い肌と、手足がすらりと伸びた女性らしい肢体。

そして波打つ豊かなはちみつ色の髪と、翡翠色の瞳。


今夜のウェンディはその魅力を惜しむことなく晒し、もちろん仮面など付けていなかったので、会場中の男の視線が一度は彼女に釘付けになった。


社交界嫌いで気難しいコールリッジ伯爵令嬢が、うんと着飾って今夜の収穫祭に参加している。


そのことは収穫祭を盛り上げる最初の話題となり、ウェンディのまわりには少しでも彼女と言葉を交わそうと、ちょっとした人集りができていた。

いつもだったら逃げ出したくなってしまうような状況にも、ウェンディは怯まず、始まりを告げた収穫祭の熱気の中、ただ胸を張って立っていた。
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