王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
そこかしこからウィルフレッドのファンと思われる令嬢たちの悲鳴が聞こえたが、きつく抱きしめられているせいでまわりの様子はよく見えない。
父のような厳格で頑固な者がいれば、はしたないと言って眉をひそめるだろう。
最も、ウェンディの父であれば卒倒しているはずだが。
ウェンディはふと、どこかで自分を見守っているはずの兄が心配になった。
(呼吸困難とかになっていなければいいのだけど……)
恥ずかしさでウィルフレッドの腕から逃げようとするウェンディをしっかり捕まえて、彼はその小ぶりで可愛らしい耳に唇を寄せた。
「俺とはもう、会ってくれないのかと思った」
「そ、そんなつもりは……」
耳元で熱っぽく囁かれると、こんな公の場であるというのに、身体が火照って仕方がない。
ウェンディだって初めから神託のことは聞かされていたのだし、自分が社交界嫌いで特に爵位とはちみつをもつ令嬢として見られるのがイヤなのは、ウィルフレッドも知っていたのだろう。
事情はわかるし、わざわざ意図して近付いたことを言わなかったウィルフレッドの気持ちもわかっているつもりだ。
ただ自分のほうが舞い上がってしまっていたから、ショックだったのだ。