王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
でもそんなことは泣いたらどうでもよくなってしまうほど、この人に会いたかった。
「ただ、コールリッジ家の令嬢として舞踏会に出席するのは、しばらく控えようかと思います」
自分とウィルフレッドの今日のことは、瞬く間に噂になるだろう。
今夜ウィルフレッドに会うためにと気を張って、相当気力を使ってしまったし、何よりもう彼とは出会えたのだから。
ほとぼりがさめるまで、無理して顔を出す必要もない。
ウィルフレッドとは、会おうと思えば、これからはいつでも会ってくれるのだろうという期待も込めて。
ウェンディはそういう意味ではにかみながら言ったのだが、ウィルフレッドは別の意味にとったようだ。
文字通り、今回の件で傷付いたから、もうしばらく舞踏会は懲り懲りだと。
ウィルフレッドはウェンディの細い肩を掴み、少し身体を離すと、こっちがびっくりするほど真剣な眼差しで覗き込んできた。
(私今、何かまずいこと言った?)
ウェンディとしてはほんの冗談のつもりで、苦笑してくれればそれでよかったのに。
あまりに真剣な表情に、何事かとその琥珀色を見つめ返す。
「それなら、ランス公爵夫人として一緒に出席するというのはどうかな。俺の、妻として」
「……え?」