王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
ランバートはそう言って緋色に染まったたくさんのラズベリーが入ったカゴを持ち上げ、壁に備え付けられた扉付きの棚に近付いた。
側にいた侍女が扉を開けると、ラズベリーの入ったカゴを棚の中に押し込む。
扉を閉めると鍵をかけ、その鍵は先ほどカゴを抱えて部屋に入ってきた恰幅のいい侍女に渡した。
「公爵の侍女、王太子、国王の使者……今年は色々な者がこのラズベリーを手にしたいと考えているらしいからな。残りをどうするかは、今夜のうちに決めるとしよう」
ランバートは朱い舌でペロリと唇を舐め、エリナに意味あり気な視線を送る。
獲物をいたぶって愉しむ捕食者のようで、昨夜アリスのことを語った彼とはまるで別人に見えた。
王宮の仮面舞踏会で出会った、あの最初の日のランバートか。
もしくは、彼女のファースト・キスを呆気なく奪った初恋の男の顔だ。
「さあ、行こう。それが完成するまでの13時間、私を楽しませてくれよ」
エリナは差し出された彼の誘惑の手のひらを見つめ、ラズベリーの入った小瓶をぎゅっと握りしめた。
(もう、逃げられない)
ランバートは約束を果たしたのだ。
エリナも彼の要求に応え、誰にも取り上げられることなく果実を完成させ、キットに渡さなければならない。
エリナは瞼にチラつくキットの心配そうな顔を打ち消し、ランバートの手のひらに自分の手を重ねた。