王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
* * *
「アリス!」
キットは舞踏ホールの入り口から会場内を眺める彼女の姿を探し当て、息を切らして駆け寄った。
「殿下……彼女は、ランバートの元へ行ったのですね」
「ああ、だからはやくアレを手に入れたいんだ。エリナがアレを目的に伯爵に取りいる前に」
キットはなるべく声を落として、アリスがその気になってくれるよう必死に詰め寄る。
懇願するように見つめると、アリスは目を逸らし、苦しそうに顔を歪めた。
そして一度深呼吸をすると、ブラウンの瞳に決意を宿し、理知的な薄い唇をきゅっと引き結んでキットを見上げる。
「わかりました。今夜のうちなら、私にもアレを持ち出すことができるかもしれない」
「本当か!?」
キットが目を見開いて表情を明るくさせると、アリスはパッと視線を外す。
そして感情の読み取れない声で淡々と続けた。
「ええ。ですから、殿下はふたりを探してください。ランバートは言い寄る女性を拒んだりなどしません。きっと、屋敷のどこかの部屋に。私は後から何とかしてアレを殿下にお渡ししますから」
それはキットにとっては願ってもみない申し出で、とにかくアリスに宜しく頼み、話もそこそこにエリナを探して走り出す。