王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

これで、エリナをランバートに近付けなくて済むかもしれない。

キットがラズベリーを盗んだことはすぐに知れるであろうが、アリスの手引きであるとわかれば、ランバートも多少は対処に困るはずだ。

完成までの13時間を逃げ切れば、とりあえずふたりで元の世界へ戻れるかもしれない。


王太子が盗みを働いたあとの小説の世界がどうなるかは少し不安だが、アリスの手引きにより不問ということにもできるだろうし、もうあとは作者である弥生に任せるしかない。


(エリナ……!)


彼女が自分の元を離れて、いよいよなりふり構っていられなくなったのだ。

兄の小説をなんとかおもしろく展開させ、話を破綻させずに進め、上手くまとめてやろうと思っていたのだが、はっきり言って今はもうそれどころではない。


ただの性格上、抑えきれない庇護欲から彼女を追いかけて来たときとは比べ物にならないくらい、特別な感情でエリナを想っている。


もう今は、他のことなどどうでもよくなるほど、大切な人になってしまった。


エリナのことを自分以上に大切にしてやれない男に、二度と彼女を傷付けさせるわけにはいかない。


キットは溢れ出しそうな想いを抱え、息を切らしても足を止めることなく、エリナの姿を探して屋敷中を走り回った。
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