王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
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キットが屋敷中の部屋という部屋を探し回ってもなかなかエリナの姿を見つけられないのは当然のことで、エリナはランバートに連れられて夕暮れの庭園を散策していた。
収穫祭はメインイベントを終えた後なので、ちらほらと中庭に出てくる者もいるが、この国に夜が訪れるのはまだまだこれからだ。
エリナの感覚からすると随分と遅い夕焼けに目を細め、誘惑の音色を奏でてそっと忍び寄る収穫祭の夜に、誰もが身を晒して待っている。
不思議なもので、小さい畑とはいえ、昨夜白い実を付けていたラズベリーはすべてスカーレットに熟し、きっかり18時にひとつ残らず収穫されたという。
すっかり寂しくなった畑を眺めて歩き、昨日ランバートの新たな一面を発見することとなった噴水のまわりのベンチを見たが、そこには先客がいたので素通りする。
ふらふらと歩きながら話す間、やはりランバートはアリスの話をするとき、うんと優しい表情をすることに気付く。
彼女は今年で21歳になるから、もう今年こそは良い結婚相手を見つけてやらないといけないのだと語るランバートは、ウィルフレッドがエリナに結婚の話をするときより苦しそうだ。